2011年6月9日木曜日

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【コラム】多難な独り立ちの道―日本、原子力保安院独立の方針
HEARD ON THE STREET
* 2011698:24 JST


 政府機関を分離独立したとしても、すぐには機能しないかもしれない――。日本の金融危機から得られたこの教訓が、原子力産業の安全規制改革にとって必要だ。

            イメージ Bloomberg News
             関西電力の美浜発電所(写真左)
<記事>
 政府は7日、原子力推進を任務とする経済産業省が同時に安全監督業務を担っているのは利益の相反であるとして、原子力安全・保安院を同省から切り離す方針を明らかにした。 

 監督業務を効果的に行うには、新たな監督機関は真の独立と法的執行力、厳しい指導力、適切な人員、そして十分な予算が与えられなければならない。 

 しかし、日本は「仏作って魂入れず」ということで悪名高い。つまり独立した新しい機関を設置したが、規制は名ばかりという場合があるのだ。これは新しい機関が、銀行、通信、航空、そして原子力など各産業を保護し推進する強力な各省に恩義があるからで、一部については現在でも変わっていない。もう一つの要因は、官僚が退職後に実入りのいいポストを希望することだ。自分たちが監督した業界で退職後の仕事を得ることで、それが規制の際の手加減につながる。銀行の不良債権騒ぎ、日本航空の破綻、そして福島第一原発の事故はこれが当てはまる。 

 例えば、金融庁は、1998年に賄賂スキャンダルと不良債権問題を受けて大蔵省(現財務省)から独立したものの、何年かは効率的ではなかった。効率的になったのは、小泉純一郎首相が2002年にやり手の竹中平蔵氏を金融担当相に任命し、財務省の影響力が抑えられてからだ。その結果初めて銀行の不良債権処理が断行され、焦げ付き融資問題が最終的に解決された。それでも、現在でさえ、金融庁は「途上の組織」なのだ

 さらに、人員問題で新しい原子力規制機関は自前のスタッフを必要とする。これまでのように経済産業省から2年交代で官僚を集めるわけにはいかないのだ。出向した官僚が古巣の経済産業省に戻ることを期待している場合、一連の利益相反が生じる。経済産業省と原子力安全・保安院から新規規制機関に異動する人員は、そこに骨を埋めると覚悟すべきだ。国会議員たちもまた、経済産業省が役立たずの連中を捨てるためその新機関に送り込むようなことのないように注意する必要がある。

 金融メルトダウン(崩壊)と原子力メルトダウン(溶融)の間には天と地の差がある。日本はそのことを肝に銘じるべきだ。

[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]

記者: James Simms




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