2012年12月24日月曜日

ストックを使ったウォーキングの歴史の文献学的検討:再論


私ウエルネスウォーカーは、その日その時、調べたり感じたことを即座に記録し、後日になってそれを引っ張り出したり検証する性癖がある。ま、要するに整理整頓の基本が出来ていない人間なのであります。そこで本日は私にとって本年発生した大きな出来事の中で、未だ記録していないものを、ここに保存しておきます。

この件に関する検証といいますか論評は、おそらく来年に持ち越すことになります♪

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出典URL: http://wwwbiz2.meijo-u.ac.jp/SEBM/ronso/no13_1/06_TOMIOKA.pdf#search=%27%E6%9D%91%E9%9B%B2%E4%BA%8C%E9%83%8E%27


名城論叢2012年7月  第13巻第1 号 P.57~58

ストックを使ったウォーキングの歴史の文献学的検討:再論

       冨岡 徹

本論は『名城論叢』第8巻第4号に掲載され
た「ストックを使ったウォーキングの歴史と身
体的効果の文献学的検討」を補足するものであ
る。この論文において,歴史に関して記載すべ
き事実が欠落し,誤解を与えかねない点があっ
た。そこで,当該論文の歴史に関する項につい
て事実を追記するとともに,歴史の流れについ
て再度整理したい。
具体的には,p. 14,右16行目からにおいて,
1988 年にアメリカでの専用ストックが販売さ
れたのを受けて,本邦で1994 年に村雲二郎氏
により歩行用ストックが特許出願(1999年特許
登録)されたようにも読み取れる。しかし,ア
メリカでの専用ポールの市販(1988年)以前の
1986年には,すでに同氏によって「ストックで
歩行力を増進する運動法」の特許が出願(出願
番号S61-243070,1988年公開S63-97179,審査
未請求)されている。この事実の記載が欠落し
ていた。したがってアメリカでの販売より以前
にストックを使った歩行法が本邦において紹介
されていたこととなる。
また,Exerstrider がはじめてヨーロッパに
紹介された文献(4) に基づき「1985 年にアメリ
カ人のTom Rutlin が紹介」と示したが,
Rutlin氏が主宰するExerstrider 社のホーム
ページ(2) や他のE-book(1) では,「1985 年春,
踵をけがしている時に使ってみたら痛みが軽減
された。数週間後一般健常者の妻と共にいつも
よりゆっくりと歩いたらポールの使い方が力強
くなり,全身運動として有用であると感じた。」
(試訳)という個人的な経験に基づいている。
その他にもこの1985 年起源を説く書物(5),(6) は
複数みられるが,同様の出来事を比較的詳しく
1986 年のこととして記載する書物(7) もあり,
1985 年に起源を断定することには無理がある
と思われる。ましてや,このような経験談を健
康志向のストックを用いた歩行法の正確な起源
とすることはできないと考えられる。
これより,「ストックを使ったウォーキング」
そのものとその歴史について再度整理を試みた
い。2008 年の拙論ではヨーロッパにおいて普
及するノルディックウォーキングに議論の中心
がみられたため,補助具としてのストックにつ
いても整理しておきたい。
日本語でストックとは,一般にドイツ語の
Skistock に由来するスキーで滑走する際にバ
ランスを保持したりするために用いる杖状のも
のと理解されている。近年では英語での呼称で
ある「ポール」といった語も使われるようになっ
ている。他に類似するものとして,杖やステッ
キなどがあるが,これらは一本で片手に用いる
ものと理解される。通常「ストック」と表現し
た場合両手に持つものとして理解されるように
思われる。
いずれにせよ,このような歩行の際に用いる
棒状のものは,古くから巡礼などの長期間歩行
時などに下肢への荷重を軽減させる目的などで
自然発生的に用いられてきた。また,加齢や障
害により下肢への荷重を低減させる必要のある
際にも広く用いられてきた。これは,現在にお
いてもステッキや杖と表現され広く用いられて
いる。また,健常者においても,野山を歩くト
レッキング時に両手にストックをはめて歩くこ
とが現在も行われている。これは1976 年にド
イツのレキ社より世界で初めて販売されたとさ
れている(3)。
このようなストックは,おもに下肢への荷重
をストックに分散させ,負荷を軽減させること
を目的に用いられるものであった。しかし,村
雲二郎氏やTom Rutlin 氏の紹介するストック
は,ストックにより後方に推進力を発生させる
点でこれまでの歩行補助具としての観点から運
動器具への観点へと異なっている点が特徴的で
ある。1997 年に生まれたとされるノルディッ
クウォーキングもこの考え方に基づくものであ
る。このような推進力を増すストックは,上肢
などが歩行運動に動員されるため消費エネル
ギー量を増すなど運動効果が高い。これが,運
動不足が叫ばれる現代社会において注目される
所以の一つと考えられる。
一方で,トレッキング用ストックのように推
進力を期待せず,下肢への負荷を軽減させるこ
とを目的にしたウォーキング用ストックも現在
発売されている。トレッキング用ストックを街
中で利用する方法もこの一つと考えられる。さ
らには運動効果増大と荷重負荷軽減の両者の特
徴を同時に発揮しようと工夫しているストック
も見られる。
現在わが国では,ストックを用いたウォーキ
ング法には,推進力が生まれる(歩幅が増す)
ウォーキング法と下肢への荷重が軽減される
(歩幅が増えない,増えてもストックを重心よ
り前方に突く)ウォーキング法が普及している。
また,それぞれの特徴を併せ持とうとするもの
もみられる。今後このようなウォーキング方法
やストックの運動効果を議論する際,どのよう
なウォーキングストックを用いてどのようなテ
クニックを理想として行ったのかを十分把握す
ることが重要であると考えられる。

文献
⑴ Downer, D. ( 2006 ) : Nordic Walking Step By
Step. E-book
http://www.nordicwalkingstepbystep.com/
(2012. 06. 10確認)
⑵ Exerstrider 社ホームページ: http://www.
nordicwalkingguru.com/nordic-walking-guru-blog/
(2012.6.13確認)
⑶ Leki 社ホームページ: http://www.leki.com/
763--history.html(2012. 06. 10確認)
⑷ Schulte, F. ( 2003 ) : Exerstriding. Die effective
Sportart aus den USA. Condition 34(5) : 42-44.
⑸ Schwanweck, K. ( 2009 ) : The ultimate Nordic
Pole Walking.Meyer & Meyer Sport, UK. p. 13
⑹ Swenson, M. ( 2009 ) : Nordic Walking. Human
Kinetics.USA.
⑺ Walter, C. ( 2009 ) : Nordic Walking. The Complete
Giode to Health, Fitness and Fun, Hatherleigh
Press, New York. USA.



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<参考>
http://www.meijo-u.ac.jp/tatujin/31-45/36.html

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