自衛隊ヘリから撮影した福島第1原発。(手前から)1号機、2号機、3号機、4号機=4月26日(防衛省提供)
3月11日の地震直後に福島第1原発で電源喪失などが原因となって原子炉圧力容器への冷却水の注入が途絶えた時間は、燃料のメルトダウン(全炉心溶融)が判明した1号機で14時間9分、2号機で6時間29分、3号機で6時間43分だったと細野豪志首相補佐官が16日、発表した。1号機だけでなく2、3号機でも長時間、燃料が冷やせなかったことを示している。細野氏は「2、3号機も最悪、炉心溶融していると見ていかないといけない。ただ(圧力容器の)温度から、冷却はうまくいっている」と述べた。東京電力が17日に発表する工程表の見直しでは、2、3号機で相当程度炉心溶融している“最悪の場合”にも原子炉を冷却できる方法を盛り込む方針だとしている。細野氏はまた、専門家の指摘に基づき、1号機では溶け落ちた燃料の一部が圧力容器から外側の格納容器
に出た可能性があるとの見方を示した。(20:49)(共同通信社)
毎日新聞
福島第1原発:空だき状態10時間以上 燃料の溶融速く
東京電力福島第1原発1号機で、地震からわずか16時間後の3月12日早朝には、燃料の大部分が溶け落ちていた可能性が強まった。東電の解析によ
ると、燃料の溶融は従来考えられていた以上の速度で進行。外部から冷却水を入れるため、弁を開いて炉内の圧力を下げる「ベント」作業を始めた時には、炉内
は既に水位が燃料の下端を下回る「空だき」状態で、燃料の大部分が溶融していたことになる。今後、ベントの作業や外からの注水のタイミングが適切だったか
が問われることになりそうだ。
東電のこれまでの発表では、福島第1原発で原子炉が空だき状態になったのは2号機(14日)が最初。1号機は空だきになっていたことすら公表され ていなかった。今回の解析結果が正しければ、1号機の空だき状態は11日午後7時半ごろから、淡水の注入開始(12日午前5時50分ごろ)まで10時間以 上続き、ベント開始はさらに5時間近く後になってからだったことになる。
工程表への影響について吉川名誉教授は「初めに描いた絵と状況が異なり、収束までの時期は確実に延びるだろう。むき出しの燃料の回収は相当困難な作業になる。廃炉の工程にたどり着くのも難航するだろう」と厳しい見通しを示した。【酒造唯、八田浩輔】
東電のこれまでの発表では、福島第1原発で原子炉が空だき状態になったのは2号機(14日)が最初。1号機は空だきになっていたことすら公表され ていなかった。今回の解析結果が正しければ、1号機の空だき状態は11日午後7時半ごろから、淡水の注入開始(12日午前5時50分ごろ)まで10時間以 上続き、ベント開始はさらに5時間近く後になってからだったことになる。
小出裕章・京都大原子炉実験所助教は「電源喪失で原子炉が冷やせなくなれば、早い時期に炉心溶融に至ることは想定できていたはずだ。燃料の損傷が限定的だとしてきた東電の説明は完全に誤っていたことになる。データの公表も遅すぎる」と指摘する。
東電は今回の解析で「圧力容器の損傷は大規模ではない」と説明するが、小出助教は「圧力容器は完全に破損し、溶けた燃料が格納容器の底に穴を開け、原子炉建屋の地下に大量の汚染水が漏れ出す原因になっている」と推定する。
吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉安全工学)も「溶融した燃料の一部は格納容器に落ちているだろう」と指摘、東電の解析に否定的な見解を示した。
さらに「燃料は格納容器のクラック(損傷部)から水と一緒に漏れている可能性もある」と述べ、地震の揺れや炉心溶融、水素爆発などさまざまな原因で格納容
器が損傷している可能性を指摘した。工程表への影響について吉川名誉教授は「初めに描いた絵と状況が異なり、収束までの時期は確実に延びるだろう。むき出しの燃料の回収は相当困難な作業になる。廃炉の工程にたどり着くのも難航するだろう」と厳しい見通しを示した。【酒造唯、八田浩輔】
毎日新聞 2011年5月15日 22時15分(最終更新 5月15日 23時47分)